卒業研究

Tさんの卒業プロジェクトが、終盤に来てとても快調に進んでいる。
あと数ヶ月しかないのが残念になるが、背水の陣だからこそ、これだけ進捗しているのかもしれない。
誇りを持てるような、有意義な卒業論文を仕上げてほしい。
やる気次第では、春休みに論文執筆まで進めるかも。
とりあえず、一歩ずつ。

科学史(9)

科学史 第9回
今学期は、台風と早慶戦で、月曜の講義が2回も減ってしまっている。
「科学史」は、例年14回やっても足りないので、後半の構成をやりなおす必要がありそう。
喉の調子もいまいちだし、話題を限って、ゆっくりめに話そうかと。
今日からは相対性理論。2回で話していた内容だが、2回半〜3回くらいかけてみるかも。

早稲田塾で講義

早稲田塾の〔最先端科学プログラム〕参加者を対象に講義。

最先端科学の話はまったくせずに、科学と技術と工学の差異と、どういった経緯でそれらが現在分かちがたく融合しているのか、みたいな話をした。
高校生の反応はいまひとつ掴めなかったが、担当してくださった早稲田塾の職員(ふたりとも自然科学系出身)にはたいそう受けていた。それじゃあ、ピンぼけだよな、と反省。

講義後、担当者と、入試に関して、お互いの手の内をギリギリまで探りあうような話をけっこう長時間して、いろいろ考えた。
一般に、大学は、受験生への情報発信力で、受験産業の遙か後塵を拝している。受験産業が作りあげた強固な「大学像」と拮抗しうる強度の情報発信をどうしていくのか、なかなか難しい問題だ。

週末業務

かれこれ半月以上、扁桃炎気味。今週は、これに風邪気味なのが加わり、ロキソニンで凌いだ日もあったので、念のため朝イチで掛かりつけの耳鼻科へ。抗生物質とか5日分出してもらった。

午後からSFCで業務。

谷内江研オープンハウス

朝の家事をして、子どもを小学校に送り、そのまま車で出勤。
1限、合成生物学の勉強会。
2限、Tさんとミーティング。

いったん自宅に帰り、江ノ電、湘南新宿ラインを乗り継いで駒場のRCASTへ。
しばらく谷内江研で溜まり、ウェットラボで全員集合の写真を撮り、17時から谷内江研のオープンハウス。
分子生物学会と日程が連続したこともあり、なつかしい研究室OBがたくさん来てくれた。
PIの谷内江くんによる挨拶とトークの後、初期メンバーによる矢継ぎ早のショートトークによるセミナー。
そのあと、ウェットラボの内覧、つづいてドライラボに移ってハッピーアワー。
たくさんの人と話せた。みな、谷内江くんに、その未知の部分も含めて期待しているのが伝わってきた。

TTCKの時にも感じたが、ゼロから何かを創る熱気は、他に代えがたいものがある。
この機会にぼくを誘ってくれた谷内江くんに、改めて、心から感謝。

ハッピーアワーは延々とつづいていたが、22時過ぎに辞去。それでも江ノ電の終電には間に合わず、明日も仕事なので(と自分に言い訳して)タクシーで帰宅。

谷内江研セットアップ

0630時起床。いつもどおり朝食と、子どもが放課後に食べるおにぎりをつくり、8時過ぎまで送りだす。
今日は、そのあとすぐに、自分も江ノ電に乗り、鎌倉で横須賀線に乗り換えて都心へ。
10時前にRCASTに到着。明日のオープンハウスに向けて、研究室のセットアップの最後の一踏ん張りにようやく参加。助教の関さんに初めて対面。
写真では見ていたが、既製品ではなく、オーダーしたベンチがとてもかっこいい。
黒をベースに、棚板などは木製の雰囲気を出している。いままで見たベンチの中でいちばんかも。
ラボ開設祝いにぼくが送ったRIKIの掛け時計は、となりのドライ部屋の正面に掛けられていた。馴染むと良いな。

子どもの帰りを自宅で待たなければならないので、午前中の作業まで参加してお暇する。
総長選挙のために本郷に向かう谷内江くんと、代々木上原駅の〔SUBWAY〕で簡単にランチを済ませ、プラットホームで別れた。

休日

由比ヶ浜
昼下がり、家族で由比ヶ浜に出る。
大人は、スノーピークのローチェアを肩に担ぎ、コーヒーを入れたポットやiPadなどを運び、波の届かない汀に腰掛けて、海を眺めながら話したり本を読んだり。
息子は無心に砂と遊んでいる。
娘は、学校行事で来週ここ(砂浜)で800メートル持久走があるので、その練習。地図アプリでおよそ800メートルのコースを目安を決めてあげる。妻もつき合わされてランニング。
由比ヶ浜はぼくたち周りだけでもつねに数十人はいったりきたりしていて、賑わっている。この季節の由比ヶ浜は、ここを目指して来た、というよりは、何となく辿りつきました、という雰囲気の人たちが多く、長閑。

進化—生命のたどる道

進化—生命のたどる道当代最高のサイエンスライターのひとりCarl Zimmerによる「The Tangled Bank: An Introduction to Evolution」の全訳。装丁は原書のデザインをベースにしつつ、より格調高く仕上がっています。岩波書店の面目躍如という印象です(専門書と割り切っていたら、無味乾燥になっていたかも。拍手)。
内容もすばらしい。高校生あたりまでを射程に入れたポピュラーサイエンスですが、分子レベルの生命科学によって展開した最新の進化生物学の知見までしっかりと納められています。その一方で、伝統的な古生物学によってもたらされる知識もバランス良く盛り込まれており、進化を巡る生命科学の最先端のランドスケープを一望できる最高のガイドブックになっています。図版も1枚1枚、どれをとっても美しいです。
14ある章は、どれもひとりの研究者の具体的な研究からはじまります。紹介される14人の研究者のほとんどは、現在、最先端で研究に没頭する人たちで、すばらしいアイディアとバイタリティで未知の原野を切り拓いていく様が活写されています。そうした研究によって、進化をめぐるさまざまな科学的取り組みが、今この瞬間にもダイナミックに進展しているのだという躍動感が伝わってきます。
自然科学の枠組みの中で、生命進化とはどのように、どこまで解明されているのかを、真剣に学びたいと願う方々に、最初の1冊として迷うことなくオススメできます。価格は、内容に対して安い気すらしますが、とはいえ、気軽にレジに持っていける値段ではないので、日本中の公共や学校の図書館で本棚に並ぶことを期待します。
(付け足し)現代の「The Tangled Bank」は「種の起源」の有名な一節から取られていて、巻頭にその一節が引用されているのですが、邦訳ではタイトルを変えたために冒頭の引用が単なるダーウィンへのリスペクト程度の印象に薄まってしまっているのが少々残念な感じです。とはいえ、日本でこの手の本を売るためにどんなタイトルがいいのか、本当に悩ましい問題だと思います。

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宇宙を織りなすもの

宇宙を織りなすもの〈下〉宇宙を織りなすもの〈上〉著者の本をはじめて読みましたが、視覚的に訴えかけるたとえ話による説明の巧みさは、数ある理論物理学のポピュラーフィクションでも随一と感じました。私はひも理論にはさして関心はなく、著者が物理学の概念の変遷の歴史をどう描いているかに興味を持って本書を手に取ったのですが、目からたくさんの鱗が落ちて大満足でした。ニュートンの回転するバケツをたとえ話を出発点として「物理現象が起こっている舞台とは何なのか」という問いかけと、第2章で放たれる「過去から未来へと一方向に過ぎ去っていく時間の矢の方向づけをしたのは何なのか」という問いかけが全編を貫いています。インフレーション理論の紐解き方も出色です。とはいえ、ひも理論へと収斂していく筋立てなので、標準模型や超対称性などさわり程度にしか触れられない重要概念もあります。「「標準模型」の宇宙」「対称性―レーダーマンが語る量子から宇宙まで」「物質のすべては光」「ガリレオの指」あたりと読み比べると、同じ概念を、研究者たちはそれぞれ、さまざまな形で「腑に落として」いるのだなあと感心します。
下巻のひも理論の解説も非常に楽しめました。前半は過剰なまでに幅をきかせていた「ザ・シンプソンズ」のたとえ話も影を潜め、さまざまな抽象イメージが展開されます。ブレーンワールド仮説、ホログラム宇宙仮説など比較的新しい理論について、簡潔でかわりやすいイントロダクションを与えてくれます。ひも理論は未検証であるためいろいろ批判にさらされていますが、人類の知的冒険の最先端であることに疑いはなく、私はこの冒険を応援します。結果としてどの理論が正しかったか、などということは運も絡む副次的な要素です。冒険の過程そのものにこれだけの知的興奮が宿っているのですから、結果とは無関係に、理論そのものに計りしれない価値があると思います。

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大学とは何か

大学とは何か著者は現在、東京大学で副学長、教育企画室長、大学総合教育研究センター長といった役職に就いており、「入学時期等の教育基本問題に関する検討会議」委員も務めています。東大発で世間を騒がせている「九月入学」にも相応にコミットしているものと思われます。
ヨーロッパの歴史の中で、いかなる要請に基づいて大学というものが成立し、いかなる経緯によって日本がその制度を取り入れたのか、その後、どのように変容していったのかが、著者の観点からきわめてわかりやすく語られています。単なる制度の変遷ではなく、どういった人々が、どういった志を持って集うことで大学という場が生まれ、その後、大学に集う人々とその営みがどう移ろっていったのかという視点が与えられているため、展開が活き活きとしており、ぐいぐい読みすすめることができます。
また、多額の教育費を家庭が拠出せざるをえない状況を、国家が長年にわたって放置しつづけた結果、さまざまな歪みが蓄積した現在の日本の中等、高等教育の異形についても、端的に指摘しています。その上で、現在の日本において、大学に求められる、また大学が果たすべき使命は何かを真摯に考えることで結んでいます。学術研究としての価値は私には計れませんが、私のような生命科学を専攻する大学人にとっては、他に求めがたい価値のある一冊でした。
「九月入学」をはじめとする東大の動きに同調する大学は多く、これから数年の間に、大学をめぐる制度上の大きな変革が起こるかもしれません。社会に与える影響の大きさから「九月入学」ばかりが注目されていますが、そもそも、東京大学がめざしたのはそこではないのでは、と感じます(目的を達成するためには、九月入学にせざるを得ない、というのが実状でしょう)。大学をめぐる今後のうねりを考える上でも、とても読みやすい入門書になっており「大学とは何か」をこれから考えてみたい人すべてにおすすめの一冊です。

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