1. Singularities in Body Design

ボディプランはSingularityである

動物は、門 1ごとに固有のボディプラン(体制)すなわち基本的な解剖学的構造を持っている。私たちヒトは脊索動物門に属しており、背中側に神経管という管状の索状の神経組織を持つ。1段階狭い分類である脊椎動物亜門の動物は、この神経を守るように脊椎(背骨)を獲得した。ヘモグロビンを含んだ血液で酸素を運搬する仕組みも脊椎動物に共通の特徴だ。さらに哺乳類まで狭めると、その分類名の由来である乳房を持つ、胎生である、2心房2心室の心臓を持つなど数多くの特徴を共有することになる。
生物種間で共有されるこうした特徴は、すべてsingularityとして捉えられる。
脊索動物門の特徴は、すべての脊索動物の共通祖先が獲得した〔デザイン〕であり、その後、少なくとも現在まで世代を連ねることに成功した子孫から失われることのなかったsingularityである。脊索動物門には、ナメクジウオやホヤといった単純な比較的単純な生物種から、脊椎動物亜門(魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類のすべて)までの膨大な生物種が含まれる。脊索動物の共通祖先から、数え切れないほどの分岐を繰り返してこれらの生物種が進化していく過程で、背側神経管という〔デザイン〕が失われなかった 2ことは驚嘆に値する。
背側神経管という〔デザイン〕を獲得するに至った理由(経緯)と、獲得した背側神経管が失われなかった理由は異なると考えられるが、いずれも強力なsingularityである。

身体のデザインはSingularityの集合である

私たちヒトを含め、哺乳類に共通する解剖学的特徴のひとつひとつもまた、singularityである。
大脳、心臓、肺、胃、肝臓、膵臓、腎臓、子宮、卵巣、精巣といった器官は、それぞれ際立った機能を持ち、その機能を実現するために、器官ごとに独特のそして整然とした〔デザイン〕を有している。そのそれぞれの〔デザイン〕すなわち解剖学的/組織学的構造も、ある能力を獲得するために数多くの選択肢があった中から、たったひとつのやり方として選ばれたsingularityである。
そうしたsingularityのそれぞれに、他の〔デザイン〕ではなく、現行の〔このデザイン〕が選ばれた理由、経緯がある。これを明らかにすることにより、私たちがいま、このような姿形で、他の姿形ではなく、この姿形で生きている理由の一端に手が届く。

Notes:

  1. phylum, division. 生物の階級分類で、ドメイン、界に次いで広い分類
  2. より正確には、現在まで子孫を残している生物種は、背側神経管を失うことがなかった