進化—生命のたどる道

進化—生命のたどる道当代最高のサイエンスライターのひとりCarl Zimmerによる「The Tangled Bank: An Introduction to Evolution」の全訳。装丁は原書のデザインをベースにしつつ、より格調高く仕上がっています。岩波書店の面目躍如という印象です(専門書と割り切っていたら、無味乾燥になっていたかも。拍手)。
内容もすばらしい。高校生あたりまでを射程に入れたポピュラーサイエンスですが、分子レベルの生命科学によって展開した最新の進化生物学の知見までしっかりと納められています。その一方で、伝統的な古生物学によってもたらされる知識もバランス良く盛り込まれており、進化を巡る生命科学の最先端のランドスケープを一望できる最高のガイドブックになっています。図版も1枚1枚、どれをとっても美しいです。
14ある章は、どれもひとりの研究者の具体的な研究からはじまります。紹介される14人の研究者のほとんどは、現在、最先端で研究に没頭する人たちで、すばらしいアイディアとバイタリティで未知の原野を切り拓いていく様が活写されています。そうした研究によって、進化をめぐるさまざまな科学的取り組みが、今この瞬間にもダイナミックに進展しているのだという躍動感が伝わってきます。
自然科学の枠組みの中で、生命進化とはどのように、どこまで解明されているのかを、真剣に学びたいと願う方々に、最初の1冊として迷うことなくオススメできます。価格は、内容に対して安い気すらしますが、とはいえ、気軽にレジに持っていける値段ではないので、日本中の公共や学校の図書館で本棚に並ぶことを期待します。
(付け足し)現代の「The Tangled Bank」は「種の起源」の有名な一節から取られていて、巻頭にその一節が引用されているのですが、邦訳ではタイトルを変えたために冒頭の引用が単なるダーウィンへのリスペクト程度の印象に薄まってしまっているのが少々残念な感じです。とはいえ、日本でこの手の本を売るためにどんなタイトルがいいのか、本当に悩ましい問題だと思います。

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