科学に興味を持つ大学生、高校生に是非読んでもらいたい。若者の人生を変えるポテンシャルを持ったすばらしいポピュラーサイエンス。アトキンスの数々の著作の中でも、際だった傑作。
科学的に世界を眺めるためのヒントが全巻にわたって横溢している。全体の構成、構想が凄い。進化、DNA、エネルギー、エントロピー、原子、対称性、量子、宇宙論、時空、算術。さまざまな話題を往還しつつ、大局的には、身近なものから人間の知覚スケールとは乖離したものへ、具体的なものから抽象的なものへと読者を導いていく、この全体構成の企みの大胆さ。それを実現してしまう膨大な知識。
人間は、抽象的な概念操作を無理なくこなせる不思議な動物だが、最終章「算術」に至って、数を数えられる、ということの不思議さが実感をもって迫ってきて、身震いする。この世界、そしてこの世界の一員であるぼく自身の存在の不思議さ、おもしろさを存分に味わわせてくれる。