スティーブ・ジョブスを中心としたMacintosh開発にまつわる栄光と挫折のエピソードは数え切れないほど溢れている。その中でも、この本はおそらく空前絶後の最高傑作だろう。日本を代表するApple][ハッカーである柴田文彦氏の訳も愛情と気合いに溢れている。
断片的な逸話のなかから、Macの開発に携わった人達の魅力的なキャラクターが、徐々に輪郭鮮明に立ち現れてくる。そしてなにより、ものをつくる集団。それも世界を変えるものをつくる集団だけが持つ熱気、幸福感といったものが読むものにもひしひしと伝わってくる。一生の間のひとときでもいい、こんな時間を持てたら、なんと幸せなことだろうかと思う。もちろん、成功したがどうかが問題なのではない。この過程の中に身を置き、体験することに価値がある。だからこそ、この本を通じて追体験することで、こんなにもワクワクするのだ。