動きが生命をつくる—生命と意識への構成論的アプローチ

動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチタイトルにもなっているダイナミクスこそが生きているということの本質であるという主張には全面的に賛同する。冒頭で語られる中間層の必要性も痛感する。と、すこぶる共鳴して読み進んだが、中盤以降、明らかに文章の質が落ちてしまい、当然、読後感をも損なっている。それでも行間から匂いたつ知の香りは豊かであり、著者の主張を理解したいと心の底から思うのだが、正直、ぼくには理解し尽くせなかった。一読後に著者の論文を渉猟して、理解を進めることができたが、それを要求する書物を「一般向け」とは呼べない。序盤が非常に平易かつ魅力的であるだけに、中盤以降明らかに失速してしまった原因は、筆者の力不足というよりは、執筆や推敲に充分に時間を割くことなく出版してしまったプロセスにあるように思われる。十全に力を注いだ、次の1冊に期待したい。

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