「A Genetic Switch」第3版の邦訳。第2版は「絵とき 遺伝子スイッチ」(ISBN:427402167X)として邦訳されていて、現在古書として1万円以上の価格で取引されている。学生時代、分子遺伝学の研究室に移ったときに指導してくれた先輩院生から、まず読めと最初に渡されたのが「絵とき 遺伝子スイッチ」で、一晩で読破した。λファージの生活環を通じた遺伝子発現を解説した本なのだが、一般的に遺伝子発現調節について理解すべき事柄のエッセンスがλファージの生物学にみごとに詰め込まれており、分子生物学を学ぶための端緒としてかなりオススメな1冊。
「絵とき 遺伝子スイッチ」の感動を思いだし、先日、第3版が本書として翻訳されているのを知り、およそ10年ぶりに手にとった。日々増加する知見を増補し、内容が豊かになっているが、引き換えにコンパクトであるがゆえの一気読み可能な疾走感は削がれているかもしれない。これは、どちらが良いと断じることができるものではないし、本書も並み居る分子生物学の書籍の中では、いまだに充分コンパクトであることは間違いない。