いっせいに明滅するホタルなど、印象的な同期現象を導入として、前半は、社会といったマクロスケールから、細胞といったミクロスケールにわたり普遍的に見られる同期現象と、その背後に存在するかもしれない共通の原理について物語られる。後半は、同期現象から徐々に話題を拡大し、カオスやネットワーク科学といった、現代の非線形科学全般へと話題が及んでいく。エピソードの選び方と語り口が見事なため、何となく読んでいると、いつのまに話題が同期現象を離れ、いつのまにまた同期現象とつながってきたのか気づかないほどである。還元主義に偏りすぎた現代自然科学への批判的な視線が随所に現れるのもおもしろい。ストロガッツほどの科学者が、自分を「主流」とは考えていないのだ。
ポピュラーフィクションとして一級品(一部、専門用語に誤訳があるのが残念)。