データマイニングを用いた乳癌診断支援

[この研究は、生命進化やsingularityと直接の関係はありません]

京都大学医学部乳腺外科の戸井雅和教授との共同研究で、診療情報のデータマイニングによる乳癌の診断支援、病態予測の定式化の研究に取り組んでいます。
乳癌は、悪性腫瘍の中でも多彩かつ有効な治療法のある治癒率の高い癌です。
一方で、治療法が多様であるがゆえに、患者ごとに最適の治療法を選択するのが難しいという側面があります。
本研究では、京都大学医学部附属病院乳腺外科、東京都立駒込病院乳腺外科などの医療機関の持つ患者ごとの診療情報を対象にデータマイニングを行い、病型予測、予後予測、治療法ごとの奏功予測などを行い、乳癌診療の診断支援に役立つアプリケーションを開発することをめざしています。

研究業績

  1. “Predictions of the pathological response to neoadjuvant chemotherapy in patients with primary breast cancer using a data mining technique.” Takada M, Sugimoto M, Ohno S, Kuroi K, Sato N, Bando H, Masuda N, Iwata H, Kondo M, Sasano H, Chow LW, Inamoto T, Naito Y, Tomita M, Toi M. Breast Cancer Res Treat 134:661-70 (2012) Journal Site
    • 乳癌の治療では、外科的切除などの一次治療に先立って、しばしば術前補助化学療法[ref]化学療法:抗腫瘍薬の投与による治療のこと[/ref](ネオアジュバント療法)を実施します。本論文では、原発性[ref]原発性腫瘍:その器官(臓器)で発生した腫瘍のこと。別の器官で発生した悪性腫瘍が転移したものは転移性腫瘍と呼ぶ。[/ref]乳癌に対するネオアジュバント療法の効果を、患者ごとに、データマイニングを用いて予測する手法を開発しました。
  2. “Prediction of axillary lymph node metastasis in primary breast cancer patients using a decision tree-based model” Takada M, Sugimoto M, Naito Y, Moon HG, Han W, Noh DY, Kondo M, Kuroi K, Sasano H, Inamoto T, Tomita M, Toi M. BMC Med Inform Decis Mak 12:54 (2012) Open Access PDF
    • 原発性乳癌の治療では、乳腺に近い腋窩リンパ節への転移の有無が、治療法の選択上非常に重要になります。腋窩リンパ節への転移が見られれば、さらに遠隔の組織への転移を疑わなければなりませんし、外科的な治療においても、腋窩リンパ節の郭清(除去)も行う必要が加わります。本論文では、診療情報に基づき、非侵襲的に腋窩リンパ節転移の有無を、患者ごとに、データマイニングを用いて予測する手法を開発しました。
  3. “Predictive value of CD24 and CD44 for neoadjuvant chemotherapy response and prognosis in primary breast cancer patients” Horiguchi K, Toi M, Horiguchi S, Sugimoto M, Naito Y, Hayashi Y, Ueno T, Ohno S, Funata N, Kuroi K, Tomita M, Eishi1 YJ. Med. Dent. Sci. 57:165-175 (2010) PDF